東京高等裁判所 昭和25年(う)1603号 判決
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(理由)
本件被告事件が所謂必要的辯護の事件であること及び原裁判所が國選辯護人を選任することなく、被告人が控訴趣意書の差出期間内に同趣意書を差出さなかつたことを理由として、決定で控訴を棄却したことは洵に所論の通りである。然し乍ら刑事訴訟法は辯護人の必要につき、刑事訴訟法第四〇四條が控訴審の手續に準用している同法第二八九條には、同條所定の所謂必要的辯護の被告事件については、辯護人なくして公判を開廷することができない。同法第三八八條には控訴審では被告人のためにする辯護人でなければこれをすることができない、同法第三八九條には、公裁期日には檢察官及び辯護人は控訴趣意書に基いて辯論しなければならないとそれぞれ在つて、辯護人を公判開廷及び辯論に必要なものとしてはいるけれども、右所謂必要的辯護の被告事件における控訴趣意書の作成提出について、特に辯護人によらなければならない旨の規定はないのであるから控訴裁裁所は所謂必要的辯護の被告事件につき國選辯護人を選任して、同辯護人に控訴趣意書を差出させなければならない義務はなく、刑事訴訟法第四〇四條が控訴審の訴訟手續に準用する第二七二條の規定に準じ、訴訟記録の送付を受けたら、同條但書の場合を除き、遲滞なく、辯護人選任に關し少しとも同條所定の事項を被告人に通知し、以て軈て開廷されることあるべき公判期日の開廷及び辯論に備え、その期日までに私選辯護人の選任がなければ、裁判所において、國選辯護人を選任して公判の辯論に支障なきを期すればそれで足りる筋合である。而して今これを本件記録についてみるに、當裁裁所第一一部が訴訟記録の送付を受けて、速かに控訴趣意書の差出最終日を五月三〇日(昭和二五年と認める)とした通知書を被告人に對し、右最終日までの法定期間を置いて、同年四月一九日に送達したこと及びこれに對し、被告人から辯護人選任に關する何等の回答もなく又控訴趣意書の右差出最終日までに、同趣意書の提出もなかつたことが項目である。從つて被告人において右の如く辯護人選任に關し敢て何等の回答をも爲さず而も控訴趣意書をも提出することもなく、適法に通知された同趣意書差出最終日を漫然徒過した以上、原裁判所が、國選辯護人を選任することなく、右最終日までに控訴趣意書を差出さなかつたことを理由に刑事訴訟法第三八六條第一號に則り、決定で本件控訴を棄却したことは洵に正當であつて豪も批議せらるべき限りではない。所論は理由がない。